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大阪地方裁判所 昭和40年(行ウ)40号 判決 1969年5月15日

原告 中川徳雄訴訟承継人中川繁子 外二名

被告 西税務署長

訴訟代理人 松田英雄 外五名

主文

被告が昭和三九年七月一七日付で、亡中川徳雄の昭和三八年の所得税についてその総所得金額を金五、九八八、四五〇円としてなした更正処分のうち、金九〇六、二五〇円を超える部分は、これを取り消す。

原告らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

(当事者双方の申立て)

一、原告ら

(一)  被告が昭和三九年七月一七日付で、亡中川徳雄の昭和三八年の所得税について、その総所得金額を金五、九八八、四五〇円としてなした更正処分のうち、金八八六、二五〇円を超える部分は、これを取り消す。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決。

二、被告

(一)  原告らの請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決。

(当事者双方の主張)

第一、原告らの請求原因

一、亡中川徳雄は、大阪市西区江戸堀上通一丁目一番地において、洋服業を営むものであつたが、昭和三九年三月一二日、その昭和三八年の所得税について、総所得金額を金一、七一一、〇五九円、所得税額を金二九五、〇三〇円とする確定申告をし、更に、昭和三九年三月一六日、右確定申告について、総所得金額を金八八六、二五〇円、所得税額を金八五、八〇〇円と訂正する申告をしたのに対し、被告より、同年七月一七日、総所得金額を金五、九八八、四五〇円、所得税額を金二、〇二〇、八七〇円とする更正処分、および過少申告加算税を金九六、七五〇円とする賦課決定を受けたので、同年八月七日被告に対し異議申立てをしたところ、同年九月七日棄却され、更に同年九月一五日、大阪国税局長に対し審査請求をしたところ、昭和四〇年一月二〇日これを棄却する旨の裁決がなされ、その旨の通知を受けた。

二、本件更正処分は、亡中川徳雄が、その所有にかかる土地および建物(店舗兼居宅)を阪神高速道路公団によつて買収された際、収用補償金として受領した金員の一部金五、〇八二、二〇〇円をその所得と認定したこと、および譲渡損失金二〇、〇〇〇円を被告において否認したため、なされたものである。

三、しかし、本件収用補償金は全額が損失補償であるから、その一部をもつて、営業補償金であるとして亡中川徳雄の所得とみなすべきではない。

四、中川徳雄は昭和四〇年六月一三日死亡し、原告中川繁子が同人の妻として、その余の原告らはいずれも同人の子として、その遺産を相続した結果、原告らが亡中川徳雄の法的地位を承継した。

五、よつて、原告らは被告に対し、本件更正処分の取消しを求める。

第二、被告の答弁および主張

一、請求原因一、二の事実は、すべて認める。同三の主張は争う。

二、(一) 亡中川徳雄は、同人の昭和三八年の所得税について、昭和三九年三月一六日被告に対し、

事業所得金額 九〇六、二五〇円

譲渡損失金額  二〇、〇〇〇円

総所得金額  八八六、二五〇円

として確定申告をした。

(二) しかし被告が調査したところ、つぎのような事実が判明した。即ち、亡中川徳雄は、従前大阪市西区土佐堀船町三九番地において、土地および建物を所有して洋服業を営んでいたが、昭和三八年三月二日右土地および建物を特定公共事業用として阪神高速道路公団に買収され、その収用補償金として、

土地対価補償金 四、四四〇、〇〇〇円

建物対価補償金 一、四五六、〇〇〇円

収益補償金   四、五〇九、九〇〇円

経費補償金   一、三五六、三〇〇円

動産移転補償金    四〇、〇〇〇円

合計    一一、八〇二、二〇〇円

の支払いを受けた。

(三) 被告は、右収用補償金のうち、土地対価補償金四、四四〇、〇〇〇円および建物対価補償金一、四五六、〇〇〇円については、租税特別措置法(以下単に措置法という。)三三条の二の課税特例規定の適用を認めて、課税されるべき譲渡所得はなかつたものと認定し、また動産移転補償金四〇、〇〇〇円については、交付の目的に従つて商品、什器等の資産の移転費用に充てられたものと認めて、課税されるべき一時所得はなかつたものと認定したが、右以外に亡中川徳雄が交付を受けた収益補償金四、五〇九、九〇〇円および経費補償金一、三五六、三〇〇円の合計額五、八六六、二〇〇円については、後に詳述するように、建物対価補償金への振替えを認めた金七八四、〇〇〇円を控除した金額五、〇八二、二〇〇円を申告所得金額に加算して、事業所得金額を金五、九八八、四五〇円と算定した。

申告事業所得金額+(収益補償金+経費補償金-建物対価補償金へ振替を認めた金額)

906,250円+(4,509,900円+1,356,300円-784,000円)

更正による事業所得金額

= 5,988,450円

(四) 亡中川徳雄は、昭和三七年七月中古の軽三輪自動車を金七〇、〇〇〇円で買い受け、昭和三八年一〇月にこれを金一五、〇〇〇円で売却したとして、これに伴う譲渡損失金を金二〇、〇〇〇円と計上して確定申告をしたのであるが、右車輌は取得時において、既に法定耐用年数三年(減価償却資産の耐用年数に関する大蔵省令別表第一参照)のうち二年を経過していたから、別紙に記載した計算のとおり、譲渡損失は発生しない。そこで、被告は譲渡損失金二〇、〇〇〇円を否認した。

(五) そうすると、亡中川徳雄の事業所得金額は金五、九八八、四五〇円となり、譲渡損失金はないことになるから総所得金額は結局金五、九八八、四五〇円ということになる。したがつて、本件更正処分は正当であり、何ら違法な点はない。

三、公団の収用等に伴う損失補償の基準等、およびこれに対する課税上の取扱い等は、つぎのとおりである。

(一) 収用等に伴う損失補償

(1)  公共補償の基準

政府は、その必要とする公共用地の取得を円滑に推進し、損失補償金の算定を適正かつ統一的にするため、従来の土地収用法に加えて「公共用地の取得に関する特別措置法」(昭和三六年八月一七日施行)を制定するとともに、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和三七年六月二九日閣議決定。以下単に基準要綱という。)を定めた。したがつて、国や公団等が公共用地を取得する際、補償金を評価するについては、この基準要綱に基づき、各種の補償項目にあてはめて、その金額を算定すべきものとしているのである。

(2)  損失補償の性格

そこで、本件に関連する各損失補償について、基準要綱の損失補償金算定の評価基準をみてみると、

(ア) 土地(附加物を含む。)については、その正常なる取引価格、いわゆる「客観的な交換価値」をもつて補償金額算定の基本としているのであり、それは近傍類似の取引価格を基準としながら、これらの土地および取得する土地の位置、形状、環境、収益性その他一般の取引における価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとしており、更に当該土地に移転すべきその他の物件があるときは「当該物件がないもの(更地)としての正常な取引価格」によるものとしている(基準要綱七条、八条)

(イ) 建物等については、当該建物等を移転させることを建前とし、移転料を基本として、損失補償金を算定するのが原則となつており、その基準としては、「当該建物等を通常妥当と認められる移転先に通常妥当と認められる移転方法によつて移転するに要する費用を補償する」(基準要綱二四条)としている。但し、例外的に移転困難な場合等は建物等の所有者の請求等により、当該建物を取得するものとしている(基準要綱二五条、二六条)。

以上のことから明らかなように、土地、建物等に対する損失補償(以下対価補償ともいう。)なるものは、あくまでもその収用等が行なわれる当該資産の客観的交換価値ないし移転料として行なわれるものであつて、これと同種同等の新たな資産を取得するために要する費用を基準としてなされるものではない。

(ウ) 営業や諸経費については、その建物の収用等によつて営業を廃止したり、あるいは休業もしくは営業の規模を縮少する等を余儀なくされた場合の営業補償(基準要綱三一条乃至三三条、以下収益補償ともいう。)移転に伴う移転先の選定、得意先に対する挨拶広告等のいわゆる移転雑費の補償(基準要綱四三条。以下経費補償ともいう。)等を基準要綱は考えており、この算定の基準としては、当該資産の収用等に伴つて通常生ずるところの損失を補償するものとしているのである。

それ故、これらは建物の移転補償とその性格を異にしている。

(3)  本件用地の収用等に伴う公団の補償措置

本件土地および建物を収用した阪神高速道路公団は、二(二)において述べたとおり、基準要綱に準拠して、その収用等に伴う損失補償金を算定し、これを亡中川徳雄に対し支払つた。したがつて、亡中川徳雄が代替資産を求めようとする場合には、一応従前と同程度(価値)の資産、即ちその交付された対価補償金の範囲内でこれを求めればよいのであつて、仮にそれ以上の価額で代替資産を取得したとしても、公団としては、そこまで補償する義務はない。

(二) 収用等の場合の課税の特例に関する所得税の取扱い

(1)  収用等に伴う損失補償の課税上の特例と本件の取扱い

(ア) 対価補償金

土地補償金および建物(移転)補償金(後述するように、収益補償金のうち、対価補償金へ振替えが認められた金額を含む。)は、一応譲渡所得の計算の対象となるが、その譲渡が収用等に基因する場合の譲渡所得の計算については、措置法により、つぎのような特例方式が設けられている。即ち、(1) その交付された対価補償金によつて、代替資産を取得した場合の課税の特例(措置法三一条)、(2) その他の場合の課税の特例(措置法三三条)があつて、そのいずれを採用するかは納税者の選択に委ねられており、その収用等が本件のように特定の公共事業(措置法三三条の二第六項)を行なう起業者によつてなされた場合には、更に、(3) 特定公共事業の用地の買収等の場合に関する課税の特例(措置法三三条の二第一項)が適用される。

しかし、このような特例方式の適用を受けようとする場合には、確定申告書等にその適用を受けようとする旨の記載をし、大蔵省令で定められている書類等を添付することが、必要であると規定されている。しかるに、本件対価補償金について、亡中川徳雄は右のような手続をしなかつたのであるが、被告は措置法三三条の二第四項に従い、亡中川徳雄がその手続をしなかつたことについてやむを得ない事情があつたものと認め、同条第一項を適用して、課税されるべき譲渡所得がなかつたものと認定した

(イ) 動産移転補償金

これは、一応旧所得税法九条一項九号により、収用等のあつた年分の一時所得の収入金額に該当するが、被告は、「収用等の場合の課税の特例に関する所得税の取扱いについて」通達(昭和三九年一月二一日付直審(所)三。以下特例通達という。)の二八を適用して、交付目的に従つて、全額動産の移転費用に支出されたものと認め、課税すべき一時所得がなかつたものと認定した。

(ウ) 収益補償金および経費補償金

これらの損失補償は、主として事業の収益率を対象とした補償であるから、本来的には対価補償に含まれず(措置法三一条四項)、事業所得の計算上収入金額に算入される(旧所得税法九条一項四号)のであるが、被告は、後に述べる理由により、特例通達二一を適用し、収益補償金の一部を建物対価(移転)補償金に相当するものとしてこれを振り替え、その残額を事業所得の計算上、収入金額として算定した。

(2)  収益補償金の一部を対価補償金へ振り替えることの趣旨とその計算

収用等に伴つて交付された損失補償金のいわゆる補償区分は、原則として、その収用等の事業を行なう起業者の補償金算定根拠に基づいて判定されるべきである(特例通達二一)。しかし実際の損失補償の算定の実例をみると、起業者の判定をそのまま墨守しがたい場合もみうけられ、そのため課税上、特別の考慮を必要とすることが生じてくる。即ち、建物については、基準要綱によると、移転させることを前提とし、移転料という形でその補償金を算定する建前となつている。ところが実際には、その建物をとりこわしたままで移転せず、全然別個の建物を新築したり、または代替建物を買い受けたりする場合が見受けられる。このような場合は、むしろ当該建物の再取得価格(収用等をされた建物と同一の建物を新築すると仮定した場合の客観的取得価格をいう。)を算定して補償すべきである。そのため現実には、起業者の算定した建物の損失補償金(移転料)が、再取得価格を下まわるというごとき不合理が起こつてくる。そこで、この不合理をなくすために、収用等における収益補償金の一部を対価補償金の不足部分に振り替えうるものとして計算する方が、より実情に適合し、ひいては収用等に伴う納税者の税負担の軽減を図る所以となると考えられる。

よつて、国税庁では、このような趣旨から、収用等に伴う補償金の課税上の取扱いとして、特例通達により、交付を受けた建物の対価補償金(特別措置等で対価補償金としたものを含む。)の金額がその建物(収用等の対象となつたもの)の再取得価額として算定された金額に不足する場合、個人が収益補償金から不足額に相当する金額だけ対価補償金の金額へ振り替えて計算したときはこれを認めることとした。そしてこの場合、建物(木造)の再取得価格については、(1) 起業者が補償金の算定基礎としたその再取得価格が明らかであるときは、その再取得価格により、(2) その再取得価格が明らかでないときは、建物の対価補償金として交付を受けた金額(建物の譲渡等に要した経費の控除前および特別控置等で交付を受けたものの加算前)に、六五分の一〇〇を乗じて還算した金額によるものとしている(特例通達二一の2参照)。

(3)  被告は、本件について右特例通達を適用し、原告が交付を受けた収益補償金および経費補償金のうち、対価補償金へ振り替えうべき金額として、前叙のとおり、金七八四、〇〇〇円を算出した。

その算式はつぎのとおりである。

1,456,000円〔交付された建物対価補償金〕×(100/65)〔補償割合〕= 2,240,000円〔建物再取得価格〕

(4)  そして、被告が右のような振替計算を認めて本件更正処分をしたことは、本件の補償にあたり、用地対策連絡協議会が算定した本件建物(移転)対価補償金の計算根基に照らしても、極めて合理的なものである。即ち、用地対策連絡協議会は、本件建物の店舗および住宅の再取得価格を坪当たり金九〇、〇〇〇円、地下室のそれを坪当たり金七一、五〇〇円と算定した。したがつて、これに店舗および住宅と地下室のそれぞれの延坪数を乗じて、再取得価格を算定すると、

店舗および住定の坪当たり再建築費×同延坪数=同再建築費

90,000円×18.50坪 = 1,665,000円

地下室の坪当たり再建築費×同延坪数=同再建築費

71,500円×6.42坪 = 459,030円

1,665,000円+459,030円 = 2,124,030円

となり、これと本件建物対価補償金一、四五六、〇〇〇円との差額は、金六六八、〇三〇円となるから、本件更正処分において振替えを認めた金七八四、〇〇〇円より少ないこととなり、被告は決して不当な取扱いをしていないのである。

第三、被告の主張に対する原告らの応答および反対主張

一、(一) 被告の主張二(一)および(二)については、すべて認める。

(二) 同二(三)について。本件収用補償金のうち、土地対価補償金、建物対価補償金、および動産移転補償金については、これを課税の対象とすべきでないことは認めるが、収益補償金および経費補償金の一部である金五、〇八二、二〇〇円を事業所得金額に加算すべきであるとの主張は、争う。

(三) 同(一)乃至(三)のうち、損失補償金の算定を統一的にするため基準要綱が定められていること、および亡中川徳雄が課税の特例方式の適用を受けるために必要な手続をしなかつたことについてやむを得ない事情があつたとの被告の主張は認めるが、本件建物の再取得価格の計算については争う。

二、本件収用補償金は、その名義がどうであれ、すべて対価補償金および移転経費である。

(一) 基準要綱は、単に政府の解釈基準を統一し、各起業者間の足並みをそろえようというにとどまり、国民との関係で法的拘束力を有するものではない。土地および建物の対価補償は、買収される資産と同種同等の代替資産を取得するために要する費用を基準として算定されなければならない。仮にそうではなく、当該資産の客観的交換価値ないし移転料と代替資産の取得費用との間に差額が存することになるとすれば、被買収者はその差額だけ現実に損失を補償されないまま買収を受けることとなり、憲法二九条の正当な補償に反することになる。被告の主張によつても、実際の損失補償の算定の実例をみると、起業者の補償区分をそのまま認めるわけにはいかない場合もあることを認めている。しかも、木造建物の再取得価格を当該建物の対価補償金として交付を受けた金額に六五分の一〇〇を乗じて還算した金額とする被告の主張には、法令上の根拠はないし、また実質的な合理性もない。

仮に、土地および建物の対価補償が買収にかかる当該土地および建物の再取得価格を基準として算定されなければならないとしても、後述するように、亡中川徳雄が代替資産として購入した土地および建物の取得価格は金九、〇〇〇、〇〇〇円であつたから、新物件の方が旧物件より多少大きいとはいえ、旧物件の再取得価格もほぼ同額であるというべきである。

そして、措置法三一条四項によれば、名義がいずれであるかを問わず、即ち収益補償金名下に支払われたものであつても、実質が資産の収用等の対価補償金であるときは、右補償金は課税されるべき所得にならないことが明らかである。

(二) 経費補償金はまさに移転に伴う経費補償であり、全額経費、即ち損失であるから、これを所得に算入すべきではない。

(三) 本件土地および建物の買収に当たり、阪神高速道路公団では、収用補償金の総額について亡中川徳雄の承諾を求めていたのであつて、補償項目のふり分けは公団の内部処理にすぎず、結局支払いを受けた収用補償金の大部分は対価補償である。このことは、昭和三八年前後における亡中川徳雄の年間事業所得金額が金六七〇、〇〇〇円乃至金一、〇八〇、〇〇〇円であつたこと、買収による休業も三、四カ月にすぎなかつたことからすると、公団が金四、五〇九、九〇〇円も収益補償をするはずがないことから明らかである。

(四) 亡中川徳雄は、本件収益補償金を全体として、本件土地および建物の売却代金および移転経費として受領し、これをつぎのとおり代替資産の取得および改造費ならびにそこへの移転の経費として支出した。即ち、亡中川徳雄は昭和三八年二月一八日、大阪市西区江戸堀上通一丁目一の九、宅地一九坪六合八勺、および同地上、家屋番号同町第五番の三、木造瓦葺二階建店舗、床面積一階一一坪、二階七坪四合九勺を、代替資産として購入し、これに改造を加えて移転した。

土地建物の購入費     九、〇〇〇、〇〇〇円

右登記手続費用        一一六、〇〇〇円

建物(店舗)の改造費   二、五七五、〇一五円

改造中の火災保険         四、七九六円

ルームクーラー移転費      三二、三五〇円

移転案内費用          一三、九六〇円

移転による伝票類印刷替え諸経費 一一、四二〇円

合計         一一、七五三、五四一円

右の建物(店舗)改造費用は、代替資産の取得価格に含まれるか、あるいは必要経費とみなされるかのいずれかである。そして右合計額については、当然に措置法三一条の適用を受け、代替資産の取得価格以下については、資産の譲渡がなかつたものとして取り扱われるのである。

三、仮に本件収用補償金が措置法三一条の適用を受けないとしても、収益補償金および経費補償金といえども事業所得の補償ではない、即ち収益補償金および経費補償金が事業所得の補償であるとすれば、二(三)において述べた理由により、阪神高速道路公団が合計金五、八六六、二〇〇円も支出するはずがない。したがつて、本件収用補償金は、右金五、八六六、二〇〇〇円も含めて、措置法三三条、三三条の二の適用を受けるべきであり、金七、〇〇〇、〇〇〇円を控除した金額の二分の一について譲渡所得があつたものと取り扱うべきである。

四、仮に以上の主張がすべて認められないとしても、本件収用補償金は営業補償としての事業所ではなく、本件土地および建物の譲渡所得である。したがつて、営業補償金の大部分については、譲渡所得としての取扱いをすべきである。

第四、原告らの反対主張に対する被告の反論

一、原告らの反対主張二(二)について

経費補償金は、移転に伴う移転先の選定、収用等による休業のため従業員に支給を余儀なくされる給料相当分や、得意先に対する挨拶、広告等のいわゆる移転費の補償等を指すのであつて、その算出基準は資産そのものと関係がないから、いわゆる対価補償金に含まれず(措置法三一条四項)、事業所得の計算上収入金額に算入されるべきものである。

もつとも、亡中川徳雄が経費補償金として受領したものの中から、実際にその趣旨どおりの費用を支出した場合には、その費用を必要経費として差し引いた上、所得金額の算定がなされるべきことはいうまでもないが、本件の場合には、このような費用を支出した事実が全くないから、経費補償金は所得金額の計算上、当然収入金額に算入されるのである。

二、同二(四)について

原告らが代替資産の取得価格として主張する合計金一一、七五三、五四一円は収用資産そのものの再取得価格ではないから、本件とは関係がないし、その明細については知らない。

三、同三および四について

収益補償金および経費補償金は、収用等に伴い通常生ずる所得の減少や損失を補償するものであつて、収用資産の対価補償として所定の計算をした金額とは本質的に異なるから、措置法三一条、三三条、三三条の二の適用がなく、譲渡所得を構成する総収入金額に含めることはできない。

(証拠関係)<省略>

理由

一、原告の請求原因一および二の事実については、すべて当事者間に争いがなく、中川徳雄が昭和四〇年六月一三日死亡し、原告中川繁子が同人の妻として、その余の原告らはいずれも同人の子として、その遺産を相続した結果、原告らが亡中川徳雄の法的地位を承継したことについては、被告において明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

二、そして、つぎのような事実も、当事者間に争いがない。

(一)  亡中川徳雄は、同人の昭和三八年の所得税について、昭和三九年三月一六日被告に対し、

事業所得金額 九〇六、二五〇円

譲渡損失金額  二〇、〇〇〇円

総所得金額  八八六、二五〇円

として確定申告をした。

(二)  亡中川徳雄は、従前大阪市西区土佐堀船町三九番地において、土地および建物を所有して、洋服業を営んでいたが、昭和三八年三月二日右土地および建物を特定公共事業用として、阪神高速道路公団に買収され、その収用補償金として、

土地対価補償金 四、四四〇、〇〇〇円

建物対価補償金 一、四五六、〇〇〇円

収益補償金   四、五〇九、九〇〇円

経費補償金   一、三五六、三〇〇円

動産移転補償金    四〇、〇〇〇円

合計    一一、八〇二、二〇〇円

の支払いを受けた。

(三)  亡中川徳雄は、収用等に基因する場合の譲渡所得の計算について、措置法に定める特例方式の適用を受けようとする旨を確定申告書等に記載しなかつたが、同人が右の手続をしなかつたことについては、やむを得ない事情があつた。

三、被告は、本件収用補償金合計金一一、八〇二、二〇〇円のうち、土地対価補償金四、四四〇、〇〇〇円、建物対価補償金一、四五六、〇〇〇円、および収益補償金と経費補償金の合計額五、八六六、二〇〇円より建物対価補償金への振替えを認めた金七八四、〇〇〇円については、措置法三三条の二の課税特例規程の適用を認めて、課税されるべき譲渡所得はなかつたものと認定するが、収益補償金および経費補償金の合計額より建物対価補償金への振替額を控除した残額五、〇八二、二〇〇円については、事業取得の収入金額に加算すべきであると主張するのに対し、原告は、本件収用補償金はその名義がどうであれ、すべて対価補償金および移転経費であると主張するので、本件収用補償金の性格について、検討することとする。

(一)  ところで、措置法三一条四項は、「第一項第一号又は第五号から第七号までに規定する補償金の額は、名義がいずれであるかを問わず、資産の収用等の対価たる金額をいうものとし、収用等に際して交付を受ける移転料その他当該資産の収用等の対価たる金額以外の金額を含まないものとする」と規定している。

(二)  そして、<証拠省略>を総合すると、つぎのような事実を認めることができる。

(1)  阪神高速道路公団では、高速道路建設のため、亡中川徳雄が従前洋服商を営んでいたところの、大阪市西区土佐堀船町三九番地、宅地七坪四合、および同地上、木造瓦葺二階建地下室付店舗兼住宅一棟、一、二階床面積延一八坪五合、地下室床面積六坪四合二勺を、買収する必要があつたので、公団職員中川芳一が昭和三七年八月頃より亡中川徳雄方を訪れ、同人および原告中川定治を相手方として買収の交渉をしたが、その交渉はかなり難行し、同年末までに約一〇回を重ねてもなお容易に妥結しそうになかつた。亡中川徳雄の方では、当初代替資産の提供を求め、右店舗に近い西区土佐堀船町の土地を買つてもらいたい旨申し出たり、また公団の方でも東区道修町で代替家屋を用意したこともあつたが、これらは結局まとまらなかつた。

(2)  ところが、亡中川徳雄は、昭和三七年暮頃に、西区土佐堀上通一丁目一番地の九、宅地一九坪六合八勺、および同地上、家屋番号同町第五番の三、木造瓦葺二階建店舗、床面積一階一一坪、二階七坪四合九勺が売物に出ているのをみつけたので、これを代替資産として購入したいと考え、右代替資産の価格である金九、〇〇〇、〇〇〇円に改造費等を加えた金額で前記土地および建物を買収してもらいたい旨の申し出をなし、昭和三八年二月になつて、四、五回交渉を重ねた結果、総額一一、八〇〇、〇〇〇円余りということで、ようやく妥結をみた。そこで亡中川徳雄は同月一八日、代替資産の売主である宗川産業株式会社との間において、代替資産について代金九、〇〇〇、〇〇〇円で売買契約を締結し、同日手付金として金一、〇〇〇、〇〇〇円を支払つた。

(3)  しかし、公団としては、基準要綱がある以上、土地については、公団の理事長の諮問機関である土地評価審議会が坪当たり金六〇〇、〇〇〇円以内と決定しており、建物については、地下室のみが除却の補償であるが、その外は移転の補償とされていて、土地および建物の対価補償金として支払える金額には限度があるので、これ以上に支払うためにはその裏付資料が必要であり、亡中川徳雄の方から裏付資料が提出されたときに、収用補償金の金額を正式に決定しようということになつた。そこで、亡中川徳雄と公団との間で書類を作成する段階に入り、亡中川徳雄は、昭和三八年二月二〇日、まず土地権利者申告書(乙第二号証の六)、建物所有者申告書(乙第三号証の一三)、および居住者申告書(同号証の一四)を提出し、その頃また、公団側の要請に従い、損益計算書(同号証の一五)、売上額および仕入明細(同号証の一六)、店員および裁縫師給与明細(同号証の一七)、ならびに、経費明細(同号証の一八)を提出した。右損益計算書によれば、昭和三七年の営業利業は金六、〇一三、二六五円と記載されているが、亡中川徳雄が被告に対し申告した総所得金額は、昭和三七年が金六七九、五〇〇円、昭和三九年が金一、〇七九、一四〇円であつた。また右店員および裁縫師給与明細によれば、店員および裁縫師として一一名の氏名が掲記されているが、このうち三名のみが実在人物であつて、その外は架空人であつた。このように亡中川徳雄が公団に提出した書類に虚偽の記載がなされたのは、ひとえに総額一一、八〇〇、〇〇〇円余りで土地および建物を買収してもらうためであり、公団の方としても、一応の裏付資料が提出されればそれでよいという方針であつたため、提出された書類に記載された内容が真実であるかどうかについては、調査をしなかつた。ついで公団の方では、昭和三八年二月二三日、公団が作成していた資料、および亡中川徳雄より提出された書類に基づいて、土地買収価額評定調書(乙第二号証の四)、補償金調書(乙第三号証の二)、物件補償額(同号証の三)、および移転補償額評定調書(同号証の九、一〇)等を作成した。これらの調書類によると、土地買収価額は、一坪当たり金六〇〇、〇〇〇円の計算で、金四四〇、〇〇〇円と算定されており、建物補償金は、建物の移築および除却補償金が金一、四五一、五〇九円、電話移設補償金が金四、五〇〇円と計算の上、その合計額より端数を切り捨てた金一、四五六、〇〇〇円と算定され、また営業補償は、一ヵ月の営業利益を金五〇一、一〇五円とみて休業補償が右利益の三ヵ月分、得意先損失補償が最高の補償額である右利益の六ヶ月分と計算の上、その合計額より端数を切り捨てた金四、五〇九、九〇〇円と算定され、更に経費補償は、転居先捜索費が金二五一、八八〇円、給与補償金が一ヵ月分を金二二八、一五〇円とみて休業補償と同様にその三ヵ月分金六八四、四五〇円、移転広告費が金四二〇、〇〇〇円と計算の上、その合計額より端数を切り捨てた金一、三五六、三〇〇円と算定されており、その外動産移転料が金四〇、〇〇〇円と算定されていて、収用補償金の総額は、金一一、八〇二、二〇〇円と算出されている。このようにして、同年三月一日公団職員によつて契約伺(乙第二、三号証の各一)がなされ、上司の決裁を得た上で、同月二日、亡中川徳雄と公団との間において、土地売買契約書(甲第四号証の一、乙第二号証の七)、物件移転補償契約書(甲第四号証の二、乙第三号証の二〇)および立退補償契約書(甲第四号証の三、乙第三号証の一九)の三通の契約書が正式に作成された。そして亡中川徳雄は、公団より、右契約成立の日に金五、九〇一、一〇〇円、同月二六日に金一、三三二、〇〇〇円、更に同年五月二一日に金四、五六九、一〇〇円の支払いを受け、宗川産業株式会社に対し、同年三月八日に金五、〇〇〇、〇〇〇円、同年五月二八日に金三、〇〇〇、〇〇〇円を支払い、同月一九日に本件収用にかかる土地および建物より立退きを完了した。なお亡中川徳雄が右契約の当時公団より交付を受けた書面は、土地売買契約書、物件移転補償契約書、および立退補償契約書の三通のみであり、本件収用補償金の明細が記載されている公団の証明書(乙第六乃至第九号証)の交付を受けたのは、昭和三八年の所得税の申告期限の直前であつた。

(4)  亡中川徳雄は、収用された土地および建物を立ち退くと同時に、新店舗において営業を始めたため、営業を中断したようなことはなかつた。新店舗における客筋は旧店舗のそれと比較してよくはないが、収益の伸び率が悪いという程度である。

以上の事実を認めることができ、<証拠省略>は前掲各証拠と対比して信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(三)  三(二)において認定した事実から判断すると、亡中川徳雄と公団との間における買収の交渉はかなり難行していたところ、亡中川徳雄が昭和三七年暮頃に適当な同種の代替資産をみつけてきたので、その売買代金に改造費等および移転に伴う経費を加えた金額で、本件収用にかかる土地および建物を買収しようということになつたが、公団が土地および建物の対価補償金として支払える金額は、基準要綱がある以上制限されているので、公団の方としては、亡中川徳雄より一応の裏付資料を提出させた上、収用補償金の合計額が亡中川徳雄の要求する金一一、八〇〇、〇〇〇円余りになるよう、収益補償および経費補償の名目で補償額を算出したものと解せられ、つまり、本件収用補償金の総額は、本件収用にかかる土地および建物の対価を代替資産の取得価額と同額とした上、これに移転に伴う経費の補償も加えて決定されたのであるから、このような事実関係の下においては、措置法三一条四項が規定するように、本件収用補償金は、その名義がいずれであるかを問わず、一部が移転に伴う経費の補償金である外は、すべて本件収用にかかる土地および建物の対価補償金であると解するのが相当であり、被告が主張するように、対価補償金を本件収用にかかる資産の客観的交換価値に限定して把握する必要はない。

したがつて、移転に伴う経費については、それが現実に経費として支出されておれば課税の対象とはならないことは勿論であり、右対価補償金についても、措置法三一条一項により、資産の譲渡がなかつたものと取り扱われるから、譲渡所得の対象とはならないことが明らかである。

四(一)  しかしながら、昭和三八年三月二日本件収用のための契約が成立した際には、代替資産の売買代金のみが決定されていただけで、それの改造費等の明細は確定していなかつたため、結局代替資産の取得価額は推計によらざるを得なかつたのであり、また移転に伴う経費も同様に確定していなかつたから、これも推計する外はなかつたのである。それ故、亡中川徳雄が公団より支払いを受けた対価補償金と現実に支出した代替資産の取得価額との間には、差額が生じることも考えられ、また移転に伴う経費についても、その支払いを受けた額と現実に支出した額との間に差額が生じることもありうるのである。ところで、前示のような本件収用補償金が決定された事情から判断すると本件収用にかかる土地および建物の対価補償金は代替資産の取得価額と同額であるとされているのであるから、仮に右対価補償金の方が取得価額より多額であるとしても、その差額は資産の譲渡により生じた所得とはいえず、一時所得であると解するのが相当であり、また仮に移転に伴う経費についても、その支払いを受けた額の方か現実に支出した額よりも多額であるとしても、その差額は亡中川徳雄の事業により生じたものともいえないから、同様に一時所得であると解すべきである。

(二)  そこで、亡中川徳雄が代替資産の取得価額および移転に伴う経費として現実にいくら支出したかについて、検討を進めることとする。

<証拠省略>によると、つぎのような事実を認めることができる。

亡中川徳雄は、本件収用にかかる土地および建物より代替資産へ移転するに際し、つぎの金額を現実に支出した。

1  代替資産の購入代金 九、〇〇〇、〇〇〇円

2  登記手続費用      一一六、〇〇〇円

3  建物改造費     二、五四〇、九三〇円

4  ルームクーラー移転費   三二、三五〇円

5  電柱移設費        三〇、〇八五円

6  電話移設費         四、〇〇〇円

7  移転案内費用       一三、九六〇円

8  改造中の火災保険料     四、七九六円

9  伝票類印刷替え諸経費   一一、四二〇円

以上の事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

(三)  右において認定した支出のうち、1乃至4は、代替資産を購入するについての直接の費用、および購入した建物を店舗および居住用としての使用に適応させる上で建物の利用価値を増大させるために要した費用であるから、代替資産の取得価額として取り扱うべきであり、また5乃至7は移転に伴う経費の支出と認めるべきであるが、8および9の支出は、代替資産の取得価額又は移転に伴う費用のいずれにも含ましめることはできない。

(四)  そうすると、亡中川徳雄の支出のうち、1乃至7の合計額一一、七三七、三二五円は、代替資産の取得価額および移転に伴う経費と認められるが、本件収用補償金として支払いを受けた金一一、八〇二、二〇〇円より金一一、七三七、三二五円を控除した金六四、八七五円は一時所得に計上されるべき所得金額ということになる。しかしながら、旧所得税法九条一項によると、右金額は譲渡所得等の特別控除額の範囲内であるから、結局右金額によつて総所得金額を動かすことはできない。

五、つぎに、被告が譲渡損失金二〇、〇〇〇円を否認したことが正当であるかどうかについて、検討することとする。

<証拠省略>ならびに弁論の全趣旨によると、亡中川徳雄は自動車を売却したことにより、譲渡損失金が金二〇、〇〇〇円生じたとして、その旨の確定申告をしたこと、および右自動車は中古軽三輪自動車であるが、亡中川徳雄は耐用年数が一年しか残存していない昭和三七年七月に右自動車を金七〇、〇〇〇円で取得し、昭和三八年一〇月にこれを金一五、〇〇〇円で売却したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

右において認定した事実を基礎として判断すれば、被告が主張するように、別紙に記載したとおりの計算方法により、原告には譲渡損失金が生じないことが明らかである。したがつて、被告が譲渡損失金二〇、〇〇〇円を否認し、これを総所得金額より控除しなかつたのは正当である。

六、結論

以上の次第で、亡中川徳雄の昭和三八年の総所得金額は金九〇六、二五〇円ということになるから、被告が亡中川徳雄の昭和三八年の所得税についてなした更正処分は、総所得金額九〇六、二五〇円を超える限度において違法であるから、取消しを免れない。

よつて、原告らの本訴請求は、右に判示した限度で正当であるから認容し、その余は理由がなく失当であるから棄却し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法九二条但書、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 石崎甚八 喜多村治雄 南三郎)

別紙

(算式)

中古軽三輪自動車  取得価額金 七〇、〇〇〇円

残存耐用年数 一年 減価償却方法 定額法

償却率 一〇〇%  残存価額 取得価額の一割の金七、〇〇〇円

取得年月昭和三七年七月 譲渡年月 昭和三八年一〇月 昭和三七年分の減価償却額

70,000円〔取得金額〕-7,000円〔残存価格〕= 63,000円〔減価償却の基礎となる金額〕

63,000円×(6ヶ月/12ヶ月)〔償却期間(自昭和37年7月至同年12月)〕×100% = 31,500円〔昭和37年分減価償却費〕

昭和三八年分の減価償却費

63,000円×(10ヶ月/12ヶ月)〔償却期間(自昭和38年1月至同年10月)〕×100% = 52,500円

取得価額七〇、〇〇〇円から残存価額七、〇〇〇円を控除した減価償却の基礎となる金額六三、〇〇〇円を超えて減価償却はできないから、昭和三八年分の減価償却は

昭和37年分の原価償却額

63,000円-31,500円 = 31,500円

となる。

したがつて、右車輛の譲渡時における帳簿価額は、

70,000円〔取得金額〕-(31,500円〔昭和37年分減価償却額〕+31,500円〔昭和38年分減価償却額〕)= 7,000円

となり、右車輛の譲渡損失金額二〇、〇〇〇円は発生せずかえつて右車輛の譲渡益金額八、〇〇〇円が生ずる。

15,000円〔車輌譲渡価額〕-7,000円〔帳簿価額〕= 8,000〔車輌譲渡益〕

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